使っていない土地を保有し続けると起こりうる問題点とは
以前に、次のようなご相談を受けたことがあります。それは、「義理の父が保有しているだけで使っていない土地があり、隣地の方に無償で使わせていて、その方が管理もしてくれている。家族としては売ってしまった方がいいと思うが、本人には売る気が無く、義父がこの土地の売却に納得するような良い理由があれば教えてほしい」というものでした。
売却したほうがよい場合
このような場合、売却すべき理由の一つに、維持費の問題があります。具体的には、固定資産税や除草などの管理費です。今は隣地の方が管理はしてくれていますが、それがいつまで続くかは分かりません。
また、もしも今後、相続が起きるまでそのままにするのであれば、この土地を相続された方が、その後の売却に関する対応をしなくてはいけません。売却には手間がかかります。このような手間のかかる対応を次世代に負担させてしまうよりも、自分のものを自分の代で完結できないかと考えて頂きたいですね。
また、相続が起きた後に売却する予定の場合でも、相続が完了しないと売却はできません。したがって、もしも協議分割をする場合は、その分割協議が問題なく整わなければ、売ることができないという状況になりかねません。そのため、現在の所有者の方が、明確に相続に関する遺言を残されるのであればいいのですが、そうでない場合は、自分の意思がしっかりしているうちに、売却して換金をしておく方がご家族に迷惑をかけにくいでしょう。
売却しないほうが良い場合
一方で、売却をしない方がいいとしたら、相続税の観点があります。もしも土地を相続する場合、相続税は「相続税評価額」をもとに計算されます。この相続税評価額は、時価の80%程度になると言われています。つまり、現金と土地が同じ価値であるならば、現金より土地を相続したほうが相続税を安く抑えられるのです。
取得時効には注意が必要
最後に、このご相談者様にご注意いただきたいこととして、「取得時効」があります。民法では、取得時効について以下のように定められています。「取得時効とは、所有の意思をもって物を一定期間占有したとき、その物の所有権を取得することができるという時効の制度である(民法第162条)。」取得時効が完成するのに要する期間には、善意かつ過失なしで占有した場合には10年、それ以外の場合には20年です。もしも隣地の方が、10年や20年間、自己の占有に基づいて公然と使っているということであれば、取得時効に関わる可能性があります。
その問題を防ぐためには、隣地の方と「管理していただくことを前提に、地代などは受け取りません」という書面を交わしておくとよいだろうと思います。
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(2022年8月30日取材)